我が家に税務調査が来なくなる!?魔法の制度〝書面添付〟のウソ・ホント(相続編)
皆さんは、「これを出せば税務調査が来なくなる」と言われている『書面添付制度』というものをご存知でしょうか。
多くの方が認識している『書面添付制度』というのは、
● 相続人から依頼を受けた税理士が、
● 亡くなった方の財産や通帳などを含めた財産について、
● 依頼者に対して税務調査官目線で質問や確認を厳しく行い、
「きちんと財産を精査した結果、適正な申告を行っていますよ」
という保証書として、相続税の申告書に書面を付けて税務署に提出をすることで、
「この手続きを行い提出された申告書は税理士の御墨付なので、
税務調査自体の確率が通常の半分程度まで下がる」
と、一般的にこのように認識されているものです。
その他にも、
「書面添付制度を活用すれば、調査官が自宅に来る臨宅調査の割合も下げることができる」
とも言われています。
どういうことかと言いますと、
『書面添付制度』を活用していた場合、提出された申告書に関して調査事項があれば、
調査官は直接相続人の家に訪問するのではなく、まずは担当税理士に申告書の内容確認を取ることになります。
「そこで、調査官が追求したい内容を担当税理士が全て晴らすことができれば、
調査官は相続人の自宅に訪問することなく調査は終了する」
『書面添付』にはこのようなメリットがあると、多くの方が認識されています。
ここまでの内容を聞かれた方は、
「書面添付制度を活用すれば、税務調査の対象となる確率自体も減って、
更に税務署からの確認事項があったとしても、
担当税理士が受け答えをして解決すれば調査官が自宅にやってくることもない」
「だったらそんな素晴らしい制度を使わない理由がないじゃない」
と、こう思われている方も多いでしょう。
ですが、『書面添付制度』というのは決して皆さんが思っているような魔法の制度ではありません。
ですので、今回の動画では
➀書面添付を活用すれば本当に税務調査の対象となる確率が減るのか
➁書面添付を活用すれば本当に調査官は家にやってこないのか
➂書面添付は本当に納税者に利益のある制度なのか
という3つのテーマについて、
国税局や税務署で2万件近くの相続事案の申告審理事務(税務調査の調査対象にするか・しないかを判断する業務)を行ってきた私の経験から、
『書面添付制度』に関する真実をお話をしたいと思います。
目次
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記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。
①書面添付を活用すれば本当に税務調査の対象となる確率が減るのか
書面添付制度に関する真実の1つ目は、
【書面添付制度を活用すれば本当に税務調査の対象となる確率が減るのか】という部分です。
結論から言いますと、書面添付があっても税務調査の確率は下がりません。
順を追って説明をしますと、書面添付を請け負った税理士というのは、
● 亡くなった方の財産に計上しなくてはいけない財産を、相続人の意向に沿ってわざと入れていなかった・・・など、
● 事実と異なる内容で書面添付制度を活用していれば、
● その事実が発覚した際に懲戒処分の対象となります。
ですので、書面添付を行う税理士は、亡くなった方や相続人の方の財産を、
● 国税庁が作成しているチェックシートの内容に沿って、
● 税務調査官のようにものすごく厳しくチェックをすることになります。
勘のいい方でしたらもう気付かれましたよね。
● 税理士が調査官目線で厳しくチェックを行った結果、
● 書面添付ができるとなった案件というのは、
『そもそも最初から何の問題もない清廉潔白な申告書』の訳ですから、
当然、相続税の調査対象にはなりません。
世間で言われているように、
「書面添付をしたから税務調査の確率が減った」という訳ではなく、
税務調査の確率が減ったのは
● 税理士が調査官目線でギチギチに厳しくチェックをして、
● 何の隠し事もない清廉潔白な申告書を作成した
という部分が原因なのです。
つまり書面添付の有無は関係ありません。
ですので、皆さんは
「書面添付を付ければ税務調査の確率が減ります」と、こういった謳い文句を信じて
「自分の家に名義預金やタンス預金といった後ろめたいお金を隠していたとしても、
税理士に書面添付という魔法の書類さえつけてもらえば、自分の家は調査を受けなくて済むかもしれない・・・」
と、このような勘違いをしないようにしてくださいね。
元国税調査官の立場から言いますと、
申告審理業務(調査対象にするか・しないかの判断)は、
書面添付が有無を区分することなく、一度全事案をテーブルに乗せて実施しているので、
名義預金やタンス預金を隠している家庭は、書面添付がされていても、ばっちりと税務調査の対象となります。
②書面添付を活用すれば本当に調査官は家にやって来ないのか
書面添付制度に関する真実の2つ目は、
【書面添付さえ活用すれば本当に調査官は家にやってこないのか】という部分です。
冒頭の復習になりますが、書面添付制度を活用していた場合、
● 提出された申告書に関して調査事項があれば、
● 調査官は直接相続人の家に訪問するのではなく、まずは担当税理士に申告書の内容確認を取ることになります。
そして、内容確認を取った結果、
● 調査官が追求したい内容を担当税理士が全て解決することができれば、
● 調査官は相続人の自宅に訪問することなく調査は終了する
というのが、巷でよく言われている書面添付制度のメリットとなります。
この部分については、確かに前半箇所は間違っていません。
税務調査官は、
● 提出された申告書に調査を行いたい項目があった場合、
● その申告書に書面添付が付いていれば、ルール上まずは必ず担当税理士に対して内容確認を取る必要があります。
ですが、後半の部分は巷で言われている内容とは異なります。
まず調査官は、「とりあえず調査にしておこうか」というような、
いい加減で甘い考えで調査対象を選んではいません。
調査官は、
● 税務署内に蓄積されている過去の資料、
● 各金融機関から入手した個人と相続人とその家族の取引内容など、
相続人が依頼した担当税理士よりも多くの情報を精査した上で、
「確実に追加で税金が取れる」と確信を持って調査対象に選んでいます。
さて、皆さんが調査官の立場でしたら、
「確実に追徴課税が見込める」と思った事案に対して、
担当税理士に内容確認を取っただけで素直に納得するでしょうか。
しませんよね。
つまり、『調査官が担当税理士に申告内容を確認する』というのは、
『書面添付がされているので形式に則って行なっているだけ』であって、
調査官としては「絶対に追加の税金を取れる」という確信を持っているのですから、
相続人の話を聞かずに担当税理士の受け答え(意見聴取)だけで終われるはずがありません。
そもそも、税理士の何倍もの情報を持っている調査官が抱いた疑念が、
事前に税理士に意見聴取を行っただけで解決できる事は99%ないのです。
ですので、
「書面添付さえ付けていれば調査官は家にやってこない」
「やってくる可能性が大幅に低くなる」
という世間の歌い文句は誤りです。
書面添付があろうがなかろうが、提出された申告書が疑わしければ調査官は普通にあなたの家にやってきます。
まあ、ごくごくまれに調査官側の見落としなどの重大な勘違いなどがあった場合には、
調査官と担当税理士との話し合いだけで終わる場合もあります。
ですが先ほども言いましたように、
『一度調査に選定された事案が税理士とのやりとりだけで終わる』という事は99%ありません。
さて、ここまでで、
『巷で言われているような書面添付制度の魔法のようなメリットの数々は、実は真実ではなかった』
という部分を説明しました。
ですが、ここまで聞いてこられた方の中には、
「書面添付制度に特別なメリットがないことが分かった、でも別に書面添付をお願いしたからといってうちの家庭にとって大きなデメリットはないんでしょう?」
「だったら、申告書作成料金の中に書面添付がサービスで付いている事務所も見かけるし、
タダで作ってもらえるならとりあえず申告書の作成の際に書面添付をつけてもらえばいいよね」
とこう考えている方もいらっしゃるでしょう。
ですが、たとえタダで書面添付を行ってもらえるとしても、
書面添付を依頼するかどうかは慎重に検討してください。
でないと、あなたが本来亡くなった親御さんから相続できるはずだった財産が、
大きく目減りしてしまう可能性がありますからね。
どういうことか次の章で解説していきます。
③書面添付は本当に納税者に利益のある制度なのか
1章において、
● 相続税の申告書に書面添付を付けるためには、
● 税理士が税務調査官目線に立って亡くなった方の財産を厳しくチェックする必要がある、
と繰り返しお話してきました。
具体的にどのようなポイントを厳しくチェックするのかという所を解説しますので、まずは下記のチェックシートを見てみてください。
チェックを行うポイントをスライドで簡易的に表現していますが、特筆すべきは赤枠で囲った
【現金・預貯金等➂】
名義は異なるが原資、管理及び運用等の状況から被相続人に帰属するものはありませんか。
という部分です。
これは、このチャンネルでも何度も出てきている論点である、『名義預金』のことを指しています。
『名義預金』とは、
預金口座の名義人と実際に預金をしている人が異なる預金で、
● 贈与をした人が贈与を受けた人の預金通帳やカード・印鑑を管理していて、
● 贈与を受けた人が自由にお金を使えないのに
● 贈与をした人はあげたはずのお金を自由に使える状態の預金のことを、
● 他の人の名義を使った預金、つまり『名義預金』と言います。
つまり、このチェックシートは
「亡くなった方の財産には名義預金はありませんか?」
ということを確認しているのです。
ここまでの前提を踏まえた上で、
こちらの家族が、とある税理士事務所に書面添付を用いた相続税の申告依頼をしに来たとします。
被相続人:相談者の父親
財産額:7,000万円
相続人:長女、長男 計2人(妻は既に死亡)
相続税には亡くなった方の相続人の数に応じた『基礎控除』というものがあり、
この家族の場合は亡くなった方の財産から4,200万円を控除することができます。
(3000万円+600万円×法定相続人2人=4,200万円)
ですので、7,000万円から4,200万円を控除した2,800万円部分に対して相続税が課税され、
2人合わせて320万円の相続税を支払うことになる。
このように担当税理士は2人に伝えました。
ですが、面談を進める中で、
● 実は父親が生前に長女と長男名義の預金口座を作り、
● 2人は通帳や印鑑を口座開設当初から父親から受け取っていた
● そして、その口座に父親から毎年贈与を受けていた
という話が2人から出てきました。
担当税理士が2人から提示された通帳の中身を見てみますと、
2009年~2018年の10年間にかけて2人の口座には毎年父親の口座からお金が入金されており、合計金額は1,500万円でした。
贈与を受けていた10年間のうち、
2009年、2010年の贈与、2014年以降の贈与に関して:
贈与を受けていた金額は贈与税の基礎控除(110万円)以下
2011年~2013年の贈与に関して:
贈与を受けた金額が年間110万円超
担当税理士は、
「2011~2013年の贈与に関して、きちんと贈与税の申告をしていましたか?」
と尋ねると、相続人のお2人は
「贈与税の申告をしなくてはいけないということ自体を知らなかったので、申告も納税もしていません」
とのことでした。
以前、こちらの記事でも解説しましたが、
税務署から名義預金として疑われないためには、この5つのポイントが守られているかが重要となります。
この2人に聞き取りを行ったところ、
②届出印③届け出住所について:
変更は完了しており、通帳や印鑑も各自で管理
⑤110万円を超える贈与をした場合、子供や孫が自分で贈与税の申告をしているか:
贈与税の申告をしていなかった
という事でした。
そのため、このまま1,500万円全額を長女と長男のものとして、亡くなった父親の財産に加えずに申告をすれば、
将来的に調査官から、
「2011年~2013年に受けた贈与に対して、贈与税の申告がなされていませんね。
申告をしていないということは、お金をもらったという認識がない訳ですよね。
でしたら、お2人とも1,500万円全額を父親の名義預金として財産に計上してください」
と、このように言われてしまう可能性が非常に高いのです。
このように税務調査官に指摘された場合、相続人の反論として
「時効が過ぎている」「申告すること自体を知らなかった」
と、このような事を言う人がいるのですが、この反論には意味がありません。
なぜかというところはこちらの記事で解説しておりますので、ご覧になってみてください。
そのため、過去に父親から受けた贈与について申告や納税を怠っていたことを知った担当税理士は、
相続人の2人に対してこのように言いました。
「書面添付制度を活用して相続税の申告を行うためには、
贈与税の110万円以下でもらっていた2009年や2010年、2014年以降の贈与分も含めて、
この口座の中身は全て亡くなったお父さんの財産に計上する必要があります」
「ですので、お2人が受け取っていた1,500万円全額も含めて、1億円の財産額で相続税の申告をしましょう。
こうすればお2人の納税額は合計で770万円になりますが、相続税の調査を受けることはありません」
このようなやりとりの流れこそが、この書面添付制度を作った国税庁の狙いなのです。
国税庁が書面添付を進めているのは、
● 亡くなった方の預金か、相続人の預金かこの判断が難しいグレーな財産(名義預金など)をまるっと全部申告させて、
● 調査官が手間暇をかけなくても税金を取れるように、
● 本来なら相続人に寄り添うべきである税理士を税務調査官にしてしまう
こういった思惑があるからなのです。
でも、皆さんよく考えてみてください。
あなたのお父さんやお母さんが、「あなたのために」と贈与してくれたお金、
それって自分のお金だと思いませんか?
「2011年~2013年の無申告分は、自分にも過失があることから相続財産に計上されることはまだ納得できるとしても、
それ以外の年度(110万円以内で受けていた贈与)も丸ごと亡くなった父親の財産に計上するなんて、納得できない!」
という方の方が多いでしょう。
書面添付制度を推奨している税理士の全員に当てはまる事ではないのですが、
亡くなった方から受け取ったお金が少しでもグレーな場合、
「税務調査が来なくなる」という部分を強調して、それを全額相続財産に計上して申告するのです。
そうすれば、ホームページ等での謳い文句通り、税務調査の対象になりようがありませんからね。
また、私の税務署勤務時代に度々目にしたのは、相続人からの強い要望に応えてなのか、
亡くなった方の財産か・相続人の財産かという判断が難しい部分を、〝無理やり区分〟した上で、
税理士が書面添付をしている申告書です。
〝無理やり区分〟をした申告書とはどういう事か、先程のモデルケースに当てはめて説明すると、
長女や長男の預金口座のうち、
● 2011年~2013年だけは亡くなった方の預金である、
● それ以外の年度の贈与は相続人の預金である
と、このような申告書の事です。
税務調査官時代にこのような調査事案に当たった時には、「本当にラッキー!」という気分でした。
それはなぜかと言うと、
「提出された申告書がきちんと区分がされていて、調査をする必要がないから」ではありません。
そうではなくて、
「時間や手間暇を掛けて調査をしなくても、無理やりに区分したところをつつくだけで相続人から追加の税金が取れるから」
なのです。
元税務調査官として本音を言いますと、実は『名義預金』って調査をするのが結構大変なんです。
● 銀行照会をして、
● 亡くなった方と相続人の間のお金の流れを解明して、
● 預金の管理を誰がしていたのか?届出印はどんなものなのか?というような証拠集めをして、
● その結果を相続人と税理士にぶつける。
という行為は本当に骨が折れるんです。
そこにですよ、
● これは亡くなった方の預金
● これは相続人の預金
と、無理やり強引に区分して提出された申告書を見れば、
調査官の視点からすると、税理士や相続人が「この預金は名義預金です」と言ってくれているのと同じなのです。
このような申告書を見た調査官は、相続人に対して次のように主張します。
「お2人名義の通帳のうち贈与税の基礎控除を超える贈与を受けたのに、
申告も納税もしていなかった2011年~2013年の部分だけを亡くなった方の財産として計上をしていますが、
この2011年~2013年の部分の贈与に対し贈与税を納めていなかったということは、
父親からお金をもらったという認識がないから贈与税を納めていなかった訳ですよね?」
「ご自分が管理されている通帳なのに、基礎控除を超える入金があった年だけお金をもらった認識がないというのはおかしな話じゃないですか。
つまり、そもそもこの年以外の入金に関しても、父親からお金をもらったという認識がなかったわけですよね。」
「でしたら、お2人とも1,500万円全額は父親の名義預金として財産に計上してください」
と、このように、出された申告書の齟齬をつつくだけで追加の税金を取れるので、
〝無理やり区分〟をした申告書を提出して貰えると、名義預金の調査をする手間が省けてものすごく楽なのです。
先ほども触れたように、この書面添付制度自体を作って納税者に広めようとしているのは、
税金を徴収する側の国税庁です。
書面添付制度を使わせて
● 〝名義預金かどうかの判断が難しい財産〟をまるっと申告してもらえば、
● 調査官が手間をかけなくても簡単に税金を徴収することができる。
同様に、
書面添付制度を使わせて
● 〝亡くなった方の財産か、相続人の財産か判断が怪しい部分〟を無理に区分させて申告させれば、
● 税務署側の労力をかけずに問題箇所を指摘でき、結果、簡単に税金を徴収することができる。
このように、書面添付制度は納税者の利益になるような制度ではなく、
ただ税務署側にとって有利な制度でしかないのです。
実際に、私を含めた元国税の人達は、税務署側にいた時には税理士の皆さんに書面添付の利用を推奨していましたが、
相続人の財産を守る税理士になった今は、誰も書面添付制度を使っていませんし、相続人に勧めることもしていません。
税理士が本当の意味で相続人の利益を守ろうとするのであれば、
● グレーな部分を全部まるごと申告するのではなく、
● 税務署が名義預金の事実を証明できないものに対してはあえて申告を見送り、
相続人が納める税金が少しでも減るように、
● 〝どこまでの預金を亡くなった方の財産に追加するのか〟について、
● 相続人の盾となり矛となって、調査の段階で調査官と対峙する、
これが本当の税理士の役目だと私は思っています。
先程のモデルケースの税理士がこの姿勢で調査に臨んだ結果、
調査官が、
「2009年や2010年、2014年以降に関しては相続人の財産と認めてるので、
2011年~2013年の部分、2人合わせて1,500万円の部分だけを亡くなった方の財産に計上してください」
と言いましたら、
このモデルケースにおいて、相続人が支払うことになる相続税の合計額は545万円です。
ここに、過少申告加算税や延滞税などはかかりますが、贈与を受けたお金を全額計上していた場合の相続税額は770万円ですから、
相続人の2人は合わせて200万円ほどの税金を支払わずにすむことになります。
まとめ
ここまでの話を聞いて、
「確かに親が自分のために残してくれた財産なんだから、
税務署の思惑通りグレーな部分も全額相続財産に計上するんじゃなくて、
この財産は自分のものだと主張できる部分は税理士と一緒に主張していきたい」
と、このように思われた方もいらっしゃると思います。
こういった方は、書面添付制度を活用する必要はありません。
理由は、これまでお話ししてきたように、
書面添付をするためにはグレーな部分を全額計上する必要がありますし、
書面添付をするために過去に受けた贈与のセーフな部分とアウトな部分を無理やり区分して申告すると、
それはあえてこちらから相手に塩を送っていることになり、税務調査官からの格好の的になるからです。
ただ、
「そうは言われても税務調査官が家にやってくるということ自体が恐怖でしかない」
「自分が受け取れる財産はどれだけ少なくなってもいいから、
グレーな財産も含めて全て申告をして、とにかく税務調査を回避したい」
このように思われた方もいらっしゃるでしょう。
実際に、当事務所のお客さんの中にも
「受け取る財産は少なくていいから、とにかく税務調査だけは受けたくない」
という方は当然いらっしゃいます。
そして、私も当然そのような方に対して「税務署と勝負しましょう」なんて無理強いすることはしません。
そのような場合はお客さんの要望通り、グレーな財産も含めて全て亡くなった方の相続財産として申告をします。
ですが、たとえこういう方であったとしても、やはり書面添付制度を活用する必要は全くなありません。
理由は、ここまで何度もお話してきた通りです。
そもそも通常の財産に加えてグレーな財産も全て丸ごと申告するのですから、
その申告内容というのは隠し事のない100%清廉潔白な申告ですよね。
だったら、その申告書に書面添付を付けようが付けまいが、
どっちにしろその家庭は税務調査の対象にはなりません。
調査対象になるならないの判断に書面添付の有無は一切関係ありませんから、
どんなケースであったとしても、相続税の申告において書面添付制度は全く必要のない制度なのです。
ですので、この動画を見ておられる皆さんにおかれましては、
● 書面添付制度というのは巷で言われているような魔法の制度でも何でもなく、
● ただ税金を徴収する側の税務署が一方的に得をするための制度
ということを覚えておいてください。