【相続土地国庫帰属制度】相続した不要な土地を20万円で手放せる!利用条件や必要費用・相談先などを徹底解説
皆さんが親からの相続により、使い道もなく、買い手も付かない不動産を相続した場合、不要な土地・建物だけを「相続放棄」することは可能でしょうか?
答えとしては、出来ません。
皆さんが選ぶことが出来る選択肢は、
● 不要な土地、建物を含めた全ての財産を相続放棄する、
● 全ての財産を相続した上で、売れない不動産の維持費や固定資産税を払い続ける、
従来までは、このどちらかを選ぶしか方法はなかったのです。
ですが、この状況が変わりました。
2023年4月27日から導入された新制度、『相続土地国庫帰属制度』を使えば、
親から相続した不要な土地だけを、国に引き取って貰うことが可能になりました。(※制度開始『前』に相続した土地も引取り可能)
とはいえ、手放しで喜ぶことは出来ません。
皆さんが相続した不要な土地を国に引き取ってもらう為には、これら10個の条件をクリアした上で、
① 建物を取り壊し更地であること(土地の上に建物があってはいけない)
② 土地に対して第三者の担保権や使用収益件が設定されていないこと
③ 通路その他、他人による使用予定が、政令により定められていない土地であること
④ 特定有害物質により土地が汚染されていないこと
⑤ 土地の境界が明らかであること、
⑥ 崖地などの管理困難な土地でないこと
⑦ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物(建物)、車両や樹木、その他の有体物が土地の上にないこと
⑧ 除去しなければ土地の通常の管理、又は処分が出来ない有体物が地下に存在していないこと
⑨ 隣接する土地の所有者や、その他の人との訴訟トラブルを抱えていない土地であること
⑩ ①~⑨に当てはまる土地で、管理や処分をするにあたり、 高額な費用や労力を必要としない土地であること
● 土地一筆につき1万4千円の申請費用と、
● 相応の負担金を国に支払う必要があり、
誰でも気軽に、低コストで、国庫帰属制度を利用出来るという訳ではないからです。
そこで今回の記事では、これら6つのテーマに沿って、『相続土地国庫帰属制度』のメリット・デメリットについて解説をして行きます。
①相続土地国庫帰属制度の概要
②国に引き取って貰う為に必要な『10』の条件
③制度を利用する際の審査手数料
④実際に土地を引き渡す際の負担金
⑤国庫帰属制度に関する無料の相談先
⑥国庫帰属制度以外の民間オススメサービス
この制度は
● 引取りの際に複数の条件があることや、
● 決して安くない負担金を納める必要があることからも、
視聴者の皆さん全員にとってベストな選択肢とはなり得ません。
ですが、現状において『国』が行っている不要な土地の引取りサービスは、この『相続土地国庫帰属制度』のみですので、
「国が定める条件をクリア出来ている」という方は、一度前向きに制度の利用を検討されてみるのも良いでしょう。
その上で、記事の最後には、以前紹介した『不要な土地を手放すことが出来る民間サービス3選』についてもお話しますので、
● 国庫帰属制度の利用条件を満たせていなかったという方も、
● 負担金が高すぎて制度を利用することが難しいという方も、
ぜひ最後までご覧になって頂ければと思います。
目次
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記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。
①相続土地国庫帰属制度の概要
ⅰ相続土地国庫帰属制度とは(4ステップで解説)
ではまず最初に、相続土地国庫帰属制度の概要について見ていきましょう。
この制度はざっくりと言うと、
● 親から相続した不要な土地を、
● 国が定める引取りルールを満たした上で、
● 負担金を支払って国に引き取って貰う
という制度です。(※自分で購入した土地は引取りの対象外)
ⅱ不要な土地を引き取って貰う為の4ステップ
具体的な流れについて、こちらのスライドに沿って見て行きましょう。
【①承認申請】
この制度は、親族から相続・若しくは遺贈(遺言による相続)によって、不要な土地を相続した人が、
「不要な土地の所有権を引き取って下さい!」と、国に申請を行う所からスタートします。
【②法務大臣(法務局)による要件審査・承認】
その後、申請を受けた法務局が、提出書類や実際の現地調査を行い、
「申請された土地が、通常の管理(処分)コストの範囲内で管理が出来る」と判断出来た場合には、
晴れて不要な土地の国庫帰属が認められます。
この申請~調査・承認が行われるまでの期間は、物件にもよりますが、大体『半年~1年程度』です。
【③申請者が負担金を納付】
『国庫帰属に関する承認』を受けた後は、承認を受けた方が一定の負担金を国に納付することで、
【④国庫帰属が完了】
親から相続した不要な土地の所有権が、正式に国庫に帰属する、という流れとなります。
さて、これが相続土地国庫帰属制度の大まかな流れとなりますが、ここで重要なポイントを皆さんにお知らせしておきます。
それは、相続土地国庫帰属制度というのは、
『国が定める引取り条件をクリアしていない限り、土地の引き取りには一切応じてくれない』
ということです。
つまり、皆さんが相続した土地が『国が定める引取り条件』を満たしているのか・・・、ここが非常に重要となって来るのです。
ですので次の章では、『土地の承認申請を行う為に知っておくべき、国が定める引取り条件』について、順番に見て行きましょう。
②国に引き取って貰う為に必要な『10』の条件
まず前提として、
『この状態の土地は申請自体を受け付けない』というNGポイントがこちらの5つ、
①建物がある土地
②担保権や使用収益権が設定されている土地
③他人(地元住民)の利用が行われている土地
④特定有害物質により汚染されている土地
⑤境界(所有権の範囲)があきらかでない土地・所有権争いのある土地
申請は出来ても、後の調査の段階で不承認となってしまうNGポイントがこちらの5つとなります。
⑥崖のある土地(過剰な管理コストが掛かるもの)
⑦土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
⑧土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
⑧土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者と訴訟争いをしなければ管理・処分ができない土地
⑩その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
一つずつ見て行きます。
ⅰ申請自体が認められないポイント5選
【①建物がある土地】
国に引き取って貰いたい土地の上に建物が建っていると、申請の段階で引取りを却下されてしまいます。
何故なら建物というのは、
● 土地以上に高額な管理コストが掛かり、
● 取り壊すにしても高額な解体費用が発生するため、
国側も引き取りたくないからです。
ですので土地の上に建物がある場合は、申請までに建物を取り壊しておく必要があります。
【②担保権や使用収益権が設定されている土地】
土地に対して担保権(ローンなど)や、使用収益権(借地権など)といった、『第三者が主張出来る権利』が設定されている場合も、引取り対象外です。
こういった土地も、引取り申請を行うまでに、
● 権利の買取りや返還要求をしたり、
● 古い抵当権が残っている場合は登記の抹消を行っておく必要があります。
【③他人(地元住民)の利用が行われている土地】
また、他人の利用が行われている土地も引取りの対象外です。
具体的には、『地元住民が公道から公道へ通り抜ける為に利用する私道』といった、現状において不特定多数の人の利用がみられる土地は、
国側としても引取り後の管理や処分が難しいため、申請の段階で引取りを却下されます。
また、少し特殊な場所で言うと、墓地内の土地や境内地(お寺の土地)なども引取りの対象外となります。
【④特定有害物質により汚染されている土地】
法務省は『土壌汚染対策法』によって、土壌汚染対策の基準を設けているのですが、
その基準を超える『特定有害物質』により汚染されている土地は、引取りの対象外です。
ですがこの項目に関しては、『以前工場があった土地』以外はそうそう該当しないでしょうから、大多数の方にとって気にする必要はないかと思います。
【⑤境界(所有権の範囲)があきらかでない土地・所有権争いのある土地】
● 隣接する土地の所有者との間で、所有権の境界が争われている土地
● 承認申請者以外にその土地の所有権を主張する人がいる土地
このように、土地の所有権について争いがある土地については、承認申請を行うことができません。
ですので申請を行いたいという方で、「現状において土地の境界や所有権に関する争いが発生している」という方は、
事前に問題を解決しておくようにして下さい。
ⅱ調査の段階で不承認となってしまうNGポイント5選
では次は、申請は受け付けて貰えたけれど、調査の段階で不承認となってしまう土地について見て行きます。
【⑥崖のある土地(過剰な管理コストが掛かるもの)】
引き取って貰いたい土地の中に、
● 勾配:30度以上、高さ:5メートル以上という、政令が定める『崖』があり、
● 近隣に土砂災害などの被害が発生しうると認められた場合、
調査の段階で引取りを断られることになります。
逆に、引き取って貰いたい土地の中に崖があったとしても、
● 近隣に人が住んでおらず、
● 土砂災害などが発生したとしても、周囲に甚大な被害を出す可能性が低い場合は、
引取りの対象になると考えられます。
【⑦土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地】
まずここで言う『有体物』というのは、
● 果樹園の樹木
● 倒れると近隣の住民に被害が出るような枯れた樹木
● 建物には該当しない廃屋
● 放置車両
といったものが該当します。
これらの有体物が土地の上にあり、「それらが土地の管理・処分を阻害している」と認められた場合は、
調査の段階で引取りを断られることになります。
逆に、
● 引き取って貰いたい土地が森林で、その森林に樹木が生い茂っている場合、
● 宅地において安全性に問題のない範囲で土留めや柵がある場合
このように、その土地の性質上『管理に問題がない』と認められた場合には、引取りを行って貰うことが可能です。
【⑧土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地】
ここでいう地下にある『有体物』というのは、
● 地下にある建物の基礎部分
● 産業廃棄物
● 古い水道管
● 井戸や大きな石
といったものが該当します。
これらの有体物が地下にあり、「それらが土地の管理・処分を阻害している」と認められた場合は、調査の段階で引取りを断られることになります。
【⑨隣接する土地の所有者と訴訟争いをしなければ管理・処分ができない土地】
これは例えば、
● 皆さんが他人の土地(通路)を通らないと公道に出入りできない、いわゆる『袋地』を所有しているとして、
その上で、
● 隣接する土地の所有者から「この道を通るのを禁止する!」といった制限を掛けられている状態です。
この様な場合は、土地の所有者と訴訟をして、公道に出入りするための権利を確保しない限り、
調査の段階で土地(袋地)の引取りを断られることになります。
【⑩その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地】
これについては、要は国や市区町村側としては、
「土地を引き取り、国が管理する状況になった後に、土地周辺の人や財産に被害を生じさせる出来事が起これば、国側に多大な費用・労力が発生してしまう!」
「それを回避する為に、調査の段階でリスクが見込まれる土地は引取りを断ります!」
と、こう言っている訳です。
具体的には、
● 土砂の崩壊、地割れ、陥没のリスクがある土地、
● 鳥獣や害虫、その他の動物が生息する土地、
● 適切な造林や、木と木の間隔を調整する間伐が行われていない森林、
こういった土地は、調査の段階で土地の引取りを断られることになります。
さて、ここまでが、『土地の承認申請を行う為に知っておくべき、国が定める引取り条件』となります。
その上で次の章では、実際に承認申請を行う際に支払う審査手数料について見て行きましょう。
③制度を利用する際の審査手数料
制度を利用する際の審査手数料は、『土地一筆につき1万4千円』となります。
その際の注意点として、現金やキャッシュレスでの納付は受け付けて貰えませんので、
申請したい人は、申請書に1万4千円分の収入印紙を貼って納付するようにしましょう。
手数料の納付後は、
● 申請を取り下げた場合であっても、
● 審査の結果『不承認』となった場合でも、手数料は一切返還されませんので、注意が必要です。
審査の結果『不承認』となり、不承認となった要素を取り除いた上で、再度申請をする際も、1筆1万4千円の審査手数料が掛かりますので、その点も覚えておいて下さい。
では次は、審査の結果、無事に土地の引取りが可能となった際に、国(法務局)に対して支払う『負担金』の金額について見て行きましょう。
④実際に土地を引き渡す際の負担金
負担金の計算方法については、引取りの承認を受けた土地が、こちらの表の、
●『宅地、農地、森林、その他』のどの種目に該当するか
●『市街化区域(つまり市街地)や、用途地域、農用地区域』のどの区域に該当するか
これらの組み合わせによって、細かな金額が変わって来ます。
ⅰ宅地(住宅用の土地)
親から相続した宅地が【市街地にある場合】
後で詳しい実例付きで解説しますが、下の表の計算式を使い、宅地の『面積に応じた負担金』を計算することになります。
親から相続した宅地が【市街地(又は用途地域)以外にある場合】
負担金の金額は『面積に関わらず20万円』となります。
ⅱ農地
農地に関しても、同じ考え方で負担金の金額を計算します。
親から相続した農地が【市街地(又は用途地域・農用地区域)にある場合】
下の表の計算式を使い、農地の『面積に応じた負担金』を計算することになります。
親から相続した農地が【市街地(又は用途地域・農用地区域)以外にある場合】
負担金の金額は『面積に関わらず20万円』となります。
ⅲ森林
森林に関しては、先程の宅地や農地とは違い、区域による計算方法の違いというものはなく、
下の表の計算式を使って、森林の『面積に応じた負担金』の金額を計算することになります。
ⅳその他
最後に、その他の土地、たとえば雑種地や原野を引き取って貰う際の負担金の金額は、
細かな定めは一切なく『一律で20万円』となります。
それではこの前提のもと、
こちらの山田家の幸子さんが、被相続人である父親から、
● 200㎡の宅地を受け取った場合
● 300㎡の農地を受け取った場合
● 1,600㎡の森林を受け取った場合
幸子さんがそれぞれの土地を国に引き取って貰う際に掛かる負担金について見て行きましょう。
ⅴ種目別:具体的な負担金の計算
【種目:宅地】
さて、父親から市街地にある200㎡の宅地を相続した幸子さんですが、相続したのはスライドの様に間口が50cm程しかない宅地でした。
通常の土地は、建築基準法上の道路に2m以上接していなければ、家を建てることが出来ませんので、
間口が50cm程しかない宅地を相続しても、売却は難しいのです。
そのため幸子さんは国庫帰属制度の申請をし、無事に承認を受け、負担金を支払うことになりました。
その際の負担金の金額はというと・・・
幸子さんが相続した『市街地にある宅地』の面積は200㎡ですので、
200㎡×2,450円+30万3千円=79万3,000円となります。
次のパターンを見てみましょう。
【種目:農地】
父親から、いつまでも買い手の付かない『市街地にある300㎡の農地』を相続した場合、
幸子さんが法務局に支払う負担金の金額は、
300㎡×850円+29万8千円=55万3,000円となります。
【種目:森林】
同様に、父親からいつまでも買い手の付かない『1,600㎡の森林』を相続した場合、幸子さんが法務局に支払う負担金の金額は、
1,600㎡×17円+24万8千円=27万5,200円となります。
どうでしょうか。
● 市街地にある宅地や農地に関しては、負担金の金額はカナリ高額となりますが、
● 森林や雑種地、原野の負担金に関しては、比較的良心的な金額設定となっております。
ですので、親から相続した土地が『売れない森林や雑種地』であるという場合には、相続土地国庫帰属制度を積極的に活用されるのもアリでしょう。
【農地は負担金を支払うメリットあり】
また農地に関しても、相続土地国庫帰属制度を利用するメリットはあります。
どういうことかと言いますと、
基本的に田んぼや畑というのは、
● 農地法の定めにより、農業を営む人にしか売却をすることが出来ません。
そのため、農業を営む人自体が減っている昨今においては、
● 市街地にある売れない農地は、一度宅地に転用(農地転用)して、一般の方向けに売却をする
という形を取らざるを得ないのです。
ですが農地転用を行う際には、
● 十万円前後の費用の捻出
● 農業委員会に対しての許可申請
といった手間暇が掛かってしまいます。
その上で、苦労して農地を宅地に転用したとしても、
● その土地が売れるかは誰にも分からず、
● いたずらに土地の固定資産税を上げてしまうリスクもあるのです。(※宅地の方が農地よりも固定資産税が高い)
その点、国庫帰属制度に関しては、
● 農地を手放す際の負担金は高額ですが、
● 引取り要件を満たして手数料を支払うことで、土地の所有権を完全に手放すことが可能です。
なので農地の処分に苦労されているという方も、国庫帰属制度の利用は検討する価値があるでしょう。
ⅵ負担金額算定の特例
ちなみにこの負担金を計算する際には、『負担金額算定の特例』という制度を利用することが出来ます。
この特例制度は、
● 隣り合う2筆以上の土地を、
● 1筆の土地とみなした負担金額で国に引き取って貰うことが出来る、という制度です。
もう少し詳しく解説しますと、
【市街地にある土地や森林】
先程の幸子さんが相続した200㎡の宅地は、登記上において『234-1』という様に、1筆の地番の土地でした。
この1筆の土地を手放すために、幸子さんは負担金79万3,000円を支払っていましたね。
(200㎡×2,450円+30万3千円=79万3,000円)
では幸子さんが相続した宅地が、『234-1(200㎡)』・『234-2(200㎡)』の合計400㎡だった場合、
「この2筆の土地の引取りに掛かる負担金は、79万3,000円×2倍の158万6,000円になるのか?」
といえばそうではありません。
この場合、『合算負担金申出書』を法務局に提出することで、
● 200㎡+200㎡の2筆の土地を、『合計400㎡』の1筆の土地とみなして、
● 面積区分(200㎡超~400㎡以下)の欄の計算式を用いて計算をすることが出来るのです。(※土地の種目が異なる場合は特例は使えません)
その結果、400㎡×2,250円+34万3千円=124万3千円となります。
特例を使わない場合の負担金が158万6,000円ですから、実に34万3千円も安い金額で、2筆の土地を引き取って貰えるという訳ですね。
(※審査手数料は2筆で2万8,000円掛かります)
【市街地以外の土地やその他の土地】
ちなみに、皆さんが手放したい土地が、
● 市街地以外にある宅地や農地の場合、
● 雑種地や原野などの「その他の土地」に該当する場合、
これらの土地の負担金は『土地の面積に関わらず1筆20万円』でしたよね。
これらの『1筆20万円の土地』が隣り合っている場合には、
●『合算負担金申出書』を法務局に提出することで、
● 隣り合う2筆の土地の負担金を合計20万円に抑えることが出来ますので、その点も覚えておいて下さい。
(※土地の種目が異なる場合は特例は使えません)
【申出書を提出するタイミング】
この制度を利用する為には、
『承認申請書を提出する時〜帰属の承認が行われるまでの間』に申し出を行う必要がありますので、
制度の利用を検討される方は、申し出のタイミングにも注意をしておきましょう。
では次に、この章の最後のテーマ、『負担金の納付方法』について見て行きましょう。
ⅶ負担金の納付方法
無事に不要な土地を引き取って貰えることになりましたら、後日法務局から、
①引取りを承認した旨と、
②負担金を納付するための納入告知書が申請者の自宅に届きます。
負担金の納付期限は、書類が届いた翌日から30日以内ですので、
● 納入告知書に記載されている負担金額を、納入告知書を添える形で、
● 各金融機関で納付を行って下さい。
(※法務局での納付は受け付けて貰えません)
負担金を期限内に納付しない場合、国庫帰属の承認自体が取り消されてしまいますので、
負担金の納付はシッカリと期限内に行って頂ければと思います。
さて、ここまで相続土地国庫帰属制度の概要をお話して来ましたが、
どうでしょう。皆さんはこの制度を利用することが出来そうでしょうか?
と言いますのも、土地というのは、
● それぞれの家庭毎に全く違った姿、形をしているでしょうし、
● 地上や地下の有体物なども、「これは残しておいて良いの?悪いの?」と、自分ひとりで判断をするのは難しいでしょう。
そんな方の為に、国は2023年2月22日より法務局での無料相談の受付けを開始しております。
ですので次の章では、
● 相続土地国庫帰属制度に関する相談予約の手順や、
● 実際に相談できる内容について、順番に解説をしていきます。
⑤国庫帰属制度に関する無料の相談先
ⅰ制度に関する相談の予約方法
まず前提として、土地の引取りに関する相談は事前予約制で行われます。
手順としては、
①インターネットで法務局手続案内予約サービスと検索すると、
②【法務局手続案内予約サービス】ポータルというサイトが出て来ますので、サイト名をクリックして下さい。
③そうすると、各都道府県を管轄する法務局が出て来ますので、
『承認申請したい土地を管轄する法務局』を選択しましょう。
今回は、「相続した不要な土地が栃木県にある」と仮定して、
栃木県の『宇都宮地方法務局(栃木県)』を選択します。
※相談したい土地が遠方にある場合で、対面相談を希望する方は、『申請者の方の住所を管轄する法務局』でも相談は可能です。
④相談先を決定しますと予約手続きのページに移動しますので、
ページの下に進み、『宇都宮地方法務局 相続土地国庫帰属制度 相談予約』を選択します。
⑤『予約申込に関する事項』を読み、内容に納得が出来ましたら、
『上記内容に同意する』にチェックを入れましょう。
⑥ページの下に進みますと、施設名と予約枠名が出て来ますので、『対面による相談』か『電話による相談』を選び、希望の日程を選択しましょう。
⑦そうしますと『時間選択』のページに移動しますので、相談したい時間を選択し、『予約する』をクリックします。
(※相談時間は1回30分以内です)
⑧『予約手続き』のページに移動しましたら、『利用者登録せずに申し込む方はこちら』をクリックして下さい。
⑨『手続き説明』のページの内容を読んで頂き、『同意する』をクリック。
⑩そうすると『利用者ID入力』のページに進みますので、連絡が付くメールアドレスを入力し、『完了する』をクリックして下さい。
⑪メール送信完了のページに切り替わりましたら、自身のメール受信箱にメールが届いていますので、
残りの情報を入力するためにURLをクリックします。
⑫その先のページで、『相談したい土地の所在地番』や『相談内容』、『予約者の情報』と『任意のアンケート』を入力し、
『確認へ進む』をクリックして下さい。
ちなみに予約者の情報に関しては、土地の所有者本人だけではなく、家族や親族の方も相談可能ですので、当日相談を行う方の情報を入力して下さい。
⑬そして最後に入力情報に間違いがないかを確認し、『申込む』をクリック、これで予約の手続きは完了となります。
⑭先程登録したメールアドレス宛に予約完了メールが届きますので、当日はその内容に従って相談を行って下さい。
ⅱ相談前の準備資料
その際に、事前に準備しておいて欲しい資料は、
となります。
この相談票とチェックシートに関しては、当日に持参しない場合、相談を行う前に記入をすることになりますので、事前にシッカリと記入をしておきましょう。
これらの書類は、上記の➀②をクリックすると法務局のHPからダウンロードが可能です。
また、スムーズに相談を進めるために、相談したい土地に関する以下の資料など、参考になりそうなものは、できるだけ多く集めておかれることをお勧めします。
● 登記事項証明書
● 登記所備付地図の写し
● 所有権や境界に関する資料
● 土地の形状、全体が分かる写真
など
ⅲ実際に相談できる内容
当日に実際に相談できる内容は、
● 所有している土地を国に引き渡すことが出来そうか知りたい
● 作成した申請書類や添付書類に漏れがないかを確認してほしい
といった、具体的な内容であれば相談が可能です。
逆に、
● 引き取れない土地の要件を教えて欲しい、
● 負担金はどのような方法で計算するのか教えて欲しい
といった、この記事で解説して来たような内容は、相談では答えてくれません。
ですので、『制度の概要部分に関する疑問点』については、事前に法務省のHPを確認するか、この記事を改めて見直しておいて頂ければと思います。
さて、ここまでが相続土地国庫帰属制度のお話となります。
ここまで見て来られた様に、この制度を利用する為には、
● 引取りに関する10個の条件をクリアすることや、
● 決して安くない負担金を納めるというハードルが存在します。
ですので当然、
● 制度の利用条件が満たせずに利用が出来ないという方や、
● 負担金が高すぎて利用することが難しいという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、そういった方にオススメしたいのが、以前こちらの記事で紹介した3つの民間サービスです。
最後の章では、これら『不要な土地を手放すことが出来る民間サービス3選』について簡単にですが見て行きましょう。
⑥国庫帰属制度以外の民間オススメサービス
ⅰ家いちば
国庫帰属制度以外のオススメサービス1つ目は、『家いちば』です。
家いちばというのは、
「不動産を売りたい側」と「買いたい側」が、お互いにベストな相手を見つけ出して売買を成立させる、
いわゆる個人間の不動産マッチングサイトです。
● 『国庫帰属制度』では、お金を払って不要な土地を引き取って貰うのに対し、
● 『家いちば』では売り手が自由に売買価格を設定し、その価格でも欲しいという買い手が不動産を購入します。
2015年10月にサービスを開始してから、これまでの間に合計602件の負動産が『家いちば』経由で売買されています(2022年11月9日時点)。
【利用時のメリット・デメリット】
その上で、『家いちば』を利用するメリット・デメリットについてですが、
メリットとしては、
● 物件掲載~成約までの間に一切費用が掛からない点や、
● 成約後に家市場に支払う手数料が『通常の不動産業者に支払う売買手数料の半額』と、良心的なのもオススメポイントです。
逆にデメリットとしては、
● 買い手への問い合わせ返信や、現地案内、内見、価格交渉までを全て自分で行う点、
● 不動産が売れるまでの期間が読めない点
これらについてネックに感じる方もいらっしゃるでしょう。
『家いちば』についての更に詳しい情報や、売買が成立した物件の画像、実際に物件を掲載して売りに出す方法などについては、こちらの記事で解説しておりますので、興味がある方はこちらのリンクからご覧になってみて下さい。
ⅱみんなの0円物件
国庫帰属制度以外のオススメサービス、2つ目は『みんなの0円物件』です。
『みんなの0円物件』というのは、先程の『家いちば』と同様、個人間での不動産取引をサポートする不動産マッチングサイトです。
2019年7月にサービスを開始してから、これまでに430件以上の負動産が、『みんなの0円物件』経由で引き取られています。
● 『家いちば』では、掲載する物件の価格を売り手側が自由に決めることが出来ましたが、
● 『みんなの0円物件』では、全ての物件は0円で取引されることになります。
ですので私としては、親から売れない不要な土地を相続した際には、
● 一度家いちばで値段を付けて物件を掲載し、
● 数か月~半年以上経っても全く売れる気配が無いという場合に『みんなの0円物件』で0円で物件を掲載してみる
という流れがベターかと思います。
【利用時のメリット・デメリット】
その上で、み『みんなの0円物件』を利用する際のメリット・デメリットについて見て行きましょう。
みんなの0円物件を利用する際のメリットとしては、
●『0円プラン』という、物件の掲載~引き渡しまでの作業を自ら行うプランを選ぶと、0円物件側に支払う手数料は1円も発生しない点や、
● 手放したい物件が、建物が建っていない更地や山林の場合は、購入希望者に対して「0円でお譲りするので、勝手に現地を見て判断して下さいね」という様に、現地案内も必要無い点です。
逆にデメリットとしては、
● 物件の販売価格は0円のみという点
●『0円プラン』の場合は、引き渡しまでに掛かる作業を全て自分一人で行わなければならない点
● 建物がある場合は、鍵を持っている売り手が現地案内や内見を行う必要がある点
● 『家いちば』同様に、物件を手放せるまでの期間が読めないという点があります。
ⅲやまねこ不動産
国庫帰属制度以外のオススメサービス3つ目は、『やまねこ不動産』です。
『やまねこ不動産』というのは、
● 一般の不動産業者に依頼をしても売れず、
● 不動産マッチングサイトを利用しても売れなかった様な土地・建物(所有権)を、
● 有償で引き取ってくれる法人です。
制度の大枠自体は『相続土地国庫帰属制度』と同じですが、
『やまねこ不動産』の場合は、
● 相続した不動産以外の引取りにも応じてくれる点や、
● 土地の上に建物がある場合でも、現況のまま引き取ってくれる点など、
国庫帰属制度よりも、より利用者に寄り添った形でサービスを行っています。(※周りが住宅地の場合は別途解体費相当分が必要)
この他にも『国庫帰属制度』と『やまねこ不動産』のサービスには複数の相違点があるのですが、全部解説していると記事が長くなってしまいますので、気になるという方はこちらの記事をご覧になってみて下さい。
【利用時のメリット・デメリット】
では、『やまねこ不動産』を利用する際のメリット・デメリットについても見て行きましょう。
『やまねこ不動産』を利用する際のメリットとしては、
●『家いちば』や『みんなの0円物件』でも引き取り手が無い不動産を引き取って貰える。
● 他のサイトに比べて不動産を手放すまでの手間が少ない。
● 計画的に物件を手放せる
という点があります。
逆にデメリットとしては、
● 他のサービスに比べて不動産を手放す際の手数料が高い
● 農地(田畑)の引取りは出来ない
● リスクの予測が出来ない土地(引き取った後に周囲に被害が出る可能性がある土地)も、引取り不可の可能性がある
という点があります。
これらの情報を含めて、ぜひ今回の相続土地国庫帰属制度の記事と、民間サービス3選の記事を見比べて頂き、より皆さん自身にマッチするサービスを活用して頂ければと思います。